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  • 競争過多の相続分野で「頭一つ抜け出す」コアコンセプトの創り方

この記事では、相続注力事務所に向けて値下げ競争から抜け出す為の考え方・船井総研からの問題提起についてお伝えしております。
1.相続発生後手続の仕事はいずれ無くなる。付加価値要素が少なく差別化が困難
2.「単価発想」を辞め、「LTV(顧客生涯価値)発想」で考える
3.足元商圏圧倒的シェアアップ、隣接業種付加(業態転換)
4.「士業事務所」を辞めて「相続会社」を目指せ

こんにちは。相続・財産管理分野に注力する士業事務所の専門コンサルタントです。

3年前の戦い方では今の相続分野で勝ち残れない
言わずもがな日本国内は高齢化に伴い、多くの市場が将来的に縮小していく見込の中で相続市場は拡大を続けるとされる貴重な成長市場とされています。もちろんそれに伴い、士業事務所を中心に多くの事務所が相続分野に注力し、ここ2~3年で一気に市場の競争が激化しています。それに拍車をかけるのが不動産会社や葬儀社など士業事務所よりも規模が大きく、投資資本を持つ他業種も本格的に相続分野に取組み始め、益々士業事務所が勝ち残るのが難しい状況になっており、その傾向は続いていくと思います。

相続税申告9.8万円~、相続登記定額6.98万円の衝撃
相続分野においてもとりわけ「各種名義変更」「相続登記」などの相続発生後の手続業務は、付加価値が付けづらいために他事務所との差別化が難しく、値下げ競争が激化しています。相続税申告業務のトップ事務所である大手税理士法人は、最下限価格9.8万円で相続税申告に対応することを謳い、多大な販促費をかけ集客を行っています。また、士業事務所以外の一般企業が6.9万円で相続税申告手続をWEB上で自己完結することが可能なサービスを打ち出し、一定の需要を獲得しているようです。更に、相続登記を定額6.98万円で対応する司法書士以外の企業がサービス提供している状況です。

値下げ競争に持ち込む大手事務所の狙いは「相続業務以外」
上記の様な競合事務所と比べても非常に安価な報酬でサービス提供が可能なのにはもちろん理由が
あります。それは「①バックエンド商品の設定」「②大量処理が可能な高生産性業務体制」があるかどうかなどです。①は具体的には相続不動産の売却仲介手数料、二次相続提案(遺言作成&執行、民事信託など)、②はデジタルシステム活用とスタッフ分業制などで実現可能です。特に①については、大手税理士法人のマーケティング方法として「フロントエンド商品(客寄せ商品)」を相続業務(相続税申告、相続手続丸ごと代行など)とし、相続によって発生する不動産の売却提案に繋げ、グループ内の不動産仲介部門で手数料収入を得ることでグループ内の収益を創るという方法が業界の主流になっており、中堅以下の従来の相続税報酬体系で行っている事務所は全く太刀打ちできない状況になっています。

値下げ競争から抜け出す為の考え方、船井総研からの問題提起
船井総研のご支援先や会員事務所様に対して、我々コンサルタントは現在どのような支援を行い、提言を行っているのか、セミナーや弊社研究会などでお伝えしていることを少しだけ掻い摘んでお伝えしたいと思います。

① 相続発生後手続の仕事はいずれ無くなる。付加価値要素が少なく差別化が困難
前述の通り、相続手続業務自体には付加価値要素が少なく、他社との差別化が難しいために値下げされやすい業務です。士業以外の一般企業による参入などは上記でお伝えした通りですが、数年後には行政主導で相続手続が簡素化していくシステム開発が進むことで手続代行サービスの必要性も無くなる可能性もあります。「相続発生後業務はいずれ無くなる」という事を念頭に置きながら今後のサービス展開を考えていくことが必要です

② 「単価発想」を辞め、「LTV(顧客生涯価値)発想」で考える
前述の通り、相続手続業務は大量受注&大量処理することで利益を出す方法以外で、相続手続業務自体で収益化をしていくことは難しいでしょう。我々コンサルタントは「相続自体では儲からない」という話を支援先や会員事務所様にお話しています。先に述べた通り、相続手続だけで収益化を考えるのではなく、不動産売却対応や遺言作成、民事信託提案などの二次相続提案まで必ず行うなどして、一顧客からの総受注額を最大化していくという「LTV(顧客生涯価値)発想」で考えることが必須です。

③ 足元商圏圧倒的シェアアップ、隣接業種付加(業態転換)
大手税理士法人を中心に、手続業務の値下げ戦略と同時で、オンライン面談を積極的に打ち出し、相談~依頼をWEB上で完結させる取組みが少しずつ広がっています。先駆けて行っている大手税理士法人はこれまで拠点が無かったエリアにも積極的にリスティング広告などの設定商圏を広げ、全国からの案件受任を増やしています。
これら大手法人と対等に戦おうとするのではなく、「足元商圏圧倒的シェアアップ」を図るということを船井総研コンサルタントはお伝えしています。具体的には、対象商圏を市区町村にまで狭め、WEBサイトだけでなく、紙媒体を中心とした販促活動を最大化する。また、他士業などの連携先を増やし、案件紹介件数を増やしていくなどして、狭いエリアで相続分野一番事務所を目指していく方法です。
更に、それが実現出来た後は、少しずつ商圏を拡大していくことに合わせて、相続手続部隊を強化、不動産売却斡旋(売り専門不動産仲介付加)、二次相続提案強化、身元保証事業付加など士業外業務の付加などを実行し、相続業態を創っていくことを検討いただきたいと思います。

④ 「士業事務所」を辞めて「相続会社」を目指せ
前述のような話をすると一定の会員事務所様からは「○○○士ではその業務ができない」「それは○○○士の仕事ではない」という苦言を頂戴することも少なくありません。その次に「では、○○○士を辞めましょう」と我々がお伝えするととてもビックリされますが、極論を言えばそういう考え方が必要だ、という事をお伝えしたいわけです。③でお伝えしたような業態はもはや士業ではなく、「相続会社」とでも言える独自の業態だと思います。事務所に相談に来た方は、相談のきっかけは「○○○士だから」という事があったかもしれませんが、受任後仕事を進めていく中で信頼獲得が出来た後にはきっと「○○○士」という見方ではなく「相続の専門家」として考えるはずです。その様なお客様に対してどのようなサービスを提供すべきか、出来ることは非常に多くあるはずです。

「現状の常識」を変えられるプレイヤーにしか未来はない
これまでお伝えしてきたことには、すぐに取り入れられない内容もあったかもしれませんが、相続分野で地域一番事務所として成長している事務所経営者、少なくとも前述の通り相続市場を捉え、行動しています。競争過多の相続分野で「頭一つ抜け出す」コアコンセプトとなる考え方をぜひ練り直してみてください。きっと単純な値下げ競争から抜け出し、全く新しい事務所の戦略、コアコンセプトが見えてくるはずです。

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この記事を書いたコンサルタント

船井総合研究所 相続グループ

船井総合研究所の士業支援部・相続信託ビジネスグループです。
相続・財産管理業務に注力する会計事務所、法律事務所、司法書士事務所、行政書士事務所の相続周辺業務を中心に経営を考えます。