この記事では、紛争事件解決後の相続手続を提案・受任することによるメリットとその手法についてまとめております。
・相続手続の受任を目的とした集客を実施している司法書士等と競合にならず、相続手続の価格設定を比較的自由。
・相続手続のほとんどは事務局さんにお任せすることが可能
こんにちは。船井総合研究所の嶋田尚教です。
弁護士の先生向けに事務所の業績アップのお手伝いをしており、特に相続分野に注力しております。
年号も変わり、相続法や民法改正など、相続への関心が非常に高まった2019年が終わり、2020年を迎えようとしております。今年の総まとめと、来年からの取り組みを考える時期ではないかと思います。
今回のコラムでは「相続手続業務を法律事務所も取り扱うべき理由」と題しまして、紛争事件解決後の相続手続を提案・受任することによるメリットとその手法についてお伝えいたします。
はじめに、相続に取り組まれている弁護士の先生方に是非お尋ねしたいことがあります。
先生方は、
「紛争事件を受任して、事件処理して依頼者にお返ししたら終わり」
とお考えではありませんでしょうか?
もちろん、弁護士の先生方にとって注力すべき相続業務は「遺産分割」や「遺留分」といった「紛争事件」です。
そのため先生によっては「相続手続を弁護士が受任するなんて」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、弁護士の先生方が「相続手続の代行」を受任できるようになると、依頼者にとっても、法律事務所にとっても大きなメリットが生まれます。
依頼者にとってのメリットは、面倒な相続手続から解放されることです。
紛争事件が解決した後に、依頼者自身で相続手続をしたり、相続手続を代行してくれる専門家を探したりするのは、依頼者にとって非常に面倒です。
依頼者は、相続紛争の時点で疲れているのに、さらに相続手続をしなきゃいけない、という状況を大変に感じるようです。そのため、法律事務所で紛争事件を解決した後、そのまま相続手続の代行を受任できるようにすると喜ばれます。
一方で、法律事務所にとってのメリットは、相続の紛争事件自体の単価アップおよび定期的な収入が作り出せることです。
相続紛争事件と相続手続をワンセットで受任できるようになりますと、個別の相続紛争事件解決の単価アップにつながります。
また、相続手続を単体で受任できるようになりますと、今まで相談に来ていても、受任できていなかった「紛争性が低い相続事件」も受任ができるようになります。
「紛争性が低い事件」のほうがより頻度が高いため、こちらを受任できるようになると、収入が発生する頻度が増えるため、報酬の入金まで時間がかかる相続紛争事件の収入を頼りにする、不安定な法律事務所経営の脱却ができます。
実際に、A事務所様では、紛争事件解決後に相続財産の名義変更まで対応され、1件につき30万円程度の報酬をいただいています。
しかし、法律事務所のコンサルティングをしている中で、「相続手続の代行を提案しましょう」、とお伝えすると、「司法書士などの相続手続の代行を得意とする士業と相続手続で価格競争にならないか不安だ」「相続手続の業務処理体制が不安だ」というお声をいただきます。
しかし、これらの不安点は十分解消が可能です。下記にてそれぞれ見ていきましょう。
「司法書士などの相続手続の代行を得意とする士業と相続手続の価格競争にならないか不安だ」という不安点については、相続手続の受任のみを目的とした集客を実施しないため、価格競争にはならないので、問題ないといえます。
原則、遺産分割や遺留分などの紛争事件解決後、または相続調査を通して紛争性がないことが判明した場合にのみ、相続手続を提案・受任します。
そのため、相続手続の受任のみを目的とした集客を実施しません。したがって、相続手続の受任を目的とした集客を実施している司法書士等と競合にならず、相続手続の価格設定を比較的自由できます。
先生によっては、今までは遺産分割協議や調停、審判に関連する紛争事件を受任されて、相続手続は紛争事件の付帯サービスとして提供されていたのかもしれません。
しかし、相続手続も工数を割くことになるため、ご依頼をもとにお金をいただいている紛争事件処理の時間が割けなくなり、無料で対応している相続手続の処理をする時間が増えてしまいます。これでは、ひとつの紛争事件の収益に対する生産性が下がってしまいます。
※相続手続の業務処理時間は、相続手続を専門で実施している司法書士でも大体2~3か月かかります。
今後は、相続手続の代行も商品として用意し、相続の紛争事件の後の依頼者に提案していきましょう。
もう1点、「遺産分割が終わった後、相続手続を依頼してもらうのは良いが、その相続手続の業務処理体制が不安だ」という不安点についても、相続手続のほとんどは事務局さんにお任せすることが可能なため、問題ないといえます。
相続手続のほとんどは専門家でなくても処理可能なものが多く、たとえば、「預貯金の解約」や「戸籍等の書類の集約」などは、事務局におまかせすべきです。
なぜなら、相続手続の収益と相続紛争の収益とでは大幅に差があり、事務局が実施すれば十分な作業を弁護士が実施すればするほど、本来弁護士がするべき収益の高い仕事を実施する時間が減るからです。
※なお、A事務所様では当然相続手続の作業は殆ど事務局が実施しています。
ですので、相続手続を受任したら、事務局が実施できる体制を作っていきましょう。具体的には、相続専門の事務局を設けて、その事務局に相続の流れや実務を学べる資格を取得してもらうことで、相続手続を単独でも進められるように教育することが考えられます。
今回のコラムでは「相続手続を弁護士も受任すべき理由」と題しまして、紛争事件解決後の相続手続を提案・受任することによるメリットとその手法についてお伝えいたしました。
相続業務にこれから注力をお考えの先生方、もしくはすでに相続業務に注力されていて業績が伸び悩んでお困りの先生方には、「相続手続の受任」にもぜひ取り組んでいただきたいと思います。
2019年もあと少し、「来年こそは相続業務に取り組みたい」とお考えの先生方のヒントとなれば幸いでございます。来年実行する取り組みを決めて、2020年を良い形でお迎えください!