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なぜ今、相続ビジネスの「戦略」見直しが急務なのか?

2025年以降も、日本国内の高齢者人口の増加に伴い、相続手続きや終活関連市場が活況を呈することは確実視されています。しかし、このマクロな市場拡大を理由に、「何もしなくても案件が増えるだろう」と考えるのは非常に危険な判断です。

相続ビジネスに関わる士業の先生方であれば、この業界がすさまじいスピードで変化していることを肌で感じていらっしゃるはずです。特に近年、「低価格」と「利便性」を追求するサービスが台頭し、顧客の選択基準は大きく変わりつつあります。

今この瞬間に、自事務所のサービス内容、価格設定、そして集客方法が、変化する顧客ニーズに適合しているかを冷静に分析し、明確な「成長戦略」を描き直さなければ、気づいたときには顧客から選ばれない事務所になってしまう可能性があります。

今回のコラムでは、こうした厳しい市場環境の中で、貴事務所が今後も勝ち抜き、成長を続けるための具体的な道筋を解説いたします。

2025年以降、相続業界で加速する「4つの変化」

地域内の競合事務所だけをベンチマークする時代は終わりました。全国規模で起こっている地殻変動を正確に把握しなければ、既存の紹介ルートが突然途絶えるといった事態にもなりかねません。特に注視すべきは以下の4つの変化です。

変化のポイント①:大手士業法人による「大規模提携」の加速

資金力のある大手士業法人が、全国各地の金融機関や葬儀社との業務提携を加速させています。これにより、これまで地域の士業事務所が担っていた案件が、組織的な連携網を持つ大手に流れる構造が定着しつつあります。

変化のポイント②:地方・小規模事務所の「採用・定着」の困難化

相続分野の専門性を高めるには、実務経験豊富な人材の確保が不可欠です。しかし、採用市場では都心部の大手法人に人気が集中し、地方や小規模事務所は、明確な強みやビジョン、働きがいを提示できなければ、人材の採用・定着がますます困難になります。これは事業の継続性を揺るがす深刻な問題です。

変化のポイント③:「予防・課題解決型コンサル」へのシフト

単なる手続き代行だけでなく、顧客が抱える将来の不安を解消するための「生前対策」へのニーズが急増しています。特に、空き家問題とも関連する不動産活用や、老後資金まで含めたライフプランニングといった、より上流のコンサルティングがビジネスの主戦場になりつつあります。

変化のポイント④:終活ビジネスの拡大と「ワンストップ化」の徹底

身元保証や死後事務委任、見守りサービスなど、終活に関連する事業を士業事務所が直接、あるいは関連会社を設立して手がけるケースが増加しています。これは、「終活→財産管理→相続手続き」までをワンストップで提供し、顧客を生涯にわたってサポートすることで、収益の安定化と最大化を図る戦略です。

【実践編】2025年以降に「成長」する士業事務所の3つの具体戦略

前述の変化に対応し、事務所を「成長」軌道に乗せるためには、すべての士業事務所が以下の3つの戦略に可及的速やかに取り組む必要があります。

戦略①:生前対策・財産管理サポートの拡充による「顧客LTVの最大化」

相続発生後の手続き業務(点)だけでなく、生前の対策から関与することで、顧客一人当たりの生涯価値(LTV:Life Time Value)を高める発想が不可欠です。

具体的には、遺言作成、任意後見、そして近年ニーズが爆発的に増加している民事信託(家族信託)といった商品を整備し、いつでも生前相談を受任できる体制を構築します。これにより、手続き案件に比べて高単価で、かつ長期的な関係性を築けるビジネスモデルへと転換を図り、事務所の売上基盤を強化します。

戦略②:他士業・他業種との連携による「ワンストップサービス」の構築

自事務所だけですべてのサービスを完結させる必要はありません。むしろ、各分野の専門家と強固なネットワークを築き、顧客のあらゆる悩みに応えられる「総合相談窓口」としての地位を確立することが、他事務所との差別化に繋がります。

不動産会社、保険代理店、金融機関、介護施設など、積極的に外部の専門家と連携し、自事務所だけでは提供できない価値を顧客に提供する仕組みを構築してください。

戦略③:デジタル・AI活用による「高生産性・高収益」な事務所経営

人件費が高騰し、採用難が続く中で、テクノロジーを活用した業務効率化は避けて通れません。AIを活用した契約書レビューや判例検索、RPAによる定型業務の自動化、Kintoneなどのクラウドツールを活用した案件・顧客管理の徹底など、投資すべき分野は多岐にわたります。

デジタル化によって生まれた時間や人材リソースを、より付加価値の高いコンサルティング業務に集中させることが、高生産性と高収益を両立させる事業経営の鍵となります。

まとめ:変化を捉え、具体的な一歩を踏み出すために

本コラムで解説した通り、2025年以降の相続業界は、ただ待っているだけでは成長できない、厳しい二極化の時代に突入します。

しかし、見方を変えれば、「生前対策へのシフト」「他業種連携」「デジタル活用」という3つの成長戦略を具体的に実践することで、地域で圧倒的な一番事務所になる大きなチャンスが到来しているとも言えます。

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この記事を書いたコンサルタント

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